戦後76年

発行:No.356 令和3年9月25日 発行(5)

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戦後76年
平和への誓い

 今年度の能代市戦没者追悼式・平和祈念式典は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため
中止となりました。式典で発表される予定だった二ツ井中学校3年の畠山伊織さんの「平和への誓い」
の作文を掲載します。平和の尊さを次の世代へ伝えていくため、皆さんも平和について考えてみませんか。


平和のためにできることは戦争を正しく理解すること
 今年、日本は終戦から76回目の夏を迎えました。年数だけを考えると、今、15歳の僕にとって戦争は
遠い昔の出来事です。だから「終戦」という言葉を聞くと「戦争は終わったこと」と捉えてしまいそう
になりますが、本当に戦争は終わったといえるのでしょうか。

 そのような疑問を感じるようになったのは今年の7月に「『黒い雨』訴訟の上告見送り」というニュース
を見たことがきっかけでした。「黒い雨」が原爆直後に降った雨を指していることは知っていましたが、
この裁判については知りませんでした。新聞記事を確認すると「広島に原爆が投下された直後に放射性物質
を含むいわゆる『黒い雨』を浴びて健康被害を受けたと住民が訴えた裁判であり、政府が被爆者健康手帳を
交付することになった」という説明がありました。また、オンラインニュースを調べてみると長崎でも
「被爆体験者訴訟」という裁判が進行中だということを知りました。内容は広島と同様に被爆者健康手帳の
交付を求めて起こした裁判だということでした。

 広島、長崎への原爆投下は終戦直前の出来事ですから76年という長い年月がたっています。しかしまだ
解決に至っていない課題もあり、苦しみ続けている方々がたくさんいることも知りました。国語や社会の歴史
の学習で戦争について学ぶ機会はこれまでたくさんあったのですが、戦争については過去の出来事としか
考えていませんでした。しかし「戦争」は決して過去のものではなく、現在に続く大きな影を落としている
ことを知りました。なぜ戦争が起きたのか、戦争中どんなことが起きたのか、戦後どのような人がどんなことで
苦しんだのかを正しく理解しなければいけないと思うようになりました。

 そして先日、その思いをさらに強くする新聞記事と出会いました。それは「伯父の遺骨戻る日待つ」という
記事でした。戦死した伯父の遺骨を故郷に戻したいという思いで沖縄県で見つかった旧日本兵とみられる遺骨の
DNA鑑定を国に申請しているという内容でした。戦争はまだまだ続いているんだなと感じるとともに遺骨収集
ボランティア団体があることや「戦没者遺骨のDNA鑑定」が行われていることもこの記事で初めて知りました。
記事の「少なくとも私たちは戦死した人の人生を胸に刻まなくてはいけない」という言葉を読み、僕ははっと
しました。310万人ともいわれる戦争の犠牲者一人一人に、また、その遺族の方々一人一人に、その人だけの
かけがえのない人生があったこと、その犠牲の上に今の日本が築かれていることを胸に刻む必要があると
気付いたからです。

 今を生きる自分たちが平和のためにできることを改めて考えてみました。それは、76年という長い時を経ても、
本当の意味では終わったといえない戦争の恐ろしさや苦しみを正しく理解することから始まると思います。

 世界はさまざまな考えをもつ人々の集まりです。僕が生活している学校やクラスといった小さな世界でもそうです。
お互いを認め合い、尊重し合うことが必要だと感じています。クラスにいる仲間、家族、そしてこれから出会う
人たちに優しい気持ちで接していきたいと思いました。

 そして、戦争の本当の意味を理解し、未来へと語り、つないでいく役割も果たしていきたいと思います。
このことが平和な世界を実現するために僕ができる「平和への誓い」です。
 
 世界中の誰もが願う平和な世界。一人一人の平和を願う気持ちを大切に、そして心から皆が笑って過ごせる
本当の平和が訪れることを祈り、これからも自分にできることを考えて行動していきたいと思います。
 
 
No.356 令和3年9月25日 発行(5)
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