秋田杉桶樽の良さ生かし時代に合わせたもの作り

発行:No.405 令和6年1月25日発行(4)

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秋田杉桶樽の良さ生かし時代に合わせたもの作り

 享保9(1724)年、市内には54軒の桶屋があったといわれています。日本の醸造業には杉
の桶と樽が欠かせず、米代川沿いで資材となる秋田杉が手に入りやすかったことが本市で
栄えた背景にあると考えられます。
 現在市内には、樽冨かまた、能代製樽、清水桶屋の3社の桶樽製造会社があります。各社、
伝統を守りながら、現代のライフスタイルに合わせた製品作りを行っています。
 関東圏の百貨店のイベントに製品を出展したり、製作工程を実演したりするなど伝統工
芸の技の発信にも尽力しています。市でも魅力発信につながる活動に対する助成金を用意
しサポートを行っています。
 桶樽製品は、生活必需品だった昭和30年代に比べて需要は減ったものの、確かな機能性
と天然素材ならではの美しさなどから近年全国から再び注目されています。市内3社の製品
や思いに触れながら、貴重な地場産業の魅力を感じてみませんか。


樽冨かまた
 弘化3(1846)年創業。能代に現存する最も古い桶屋として知られる、鎌田長十郎が率い
た「鎌長」が前身です。現在は「現代の名工」に選ばれた11代当主鎌田勇平さんの孫の柳
谷直治さんらが製品開発を行っています。
 同社が商品づくりに掲げるテーマが「おひつと、一汁一菜。」です。香りの良さや水分
保持能力の高さといった、昔から使われてきた理由にフォーカスしつつ、現代の食卓に溶
け込む製品作りに注力しています。
 商品ラインアップは「一汁一菜」をキーワードにご飯、ぬか漬け、みそ汁の3種に限定。
テーブルの上でも使いやすい4サイズをそろえたおひつ、楕円形でかき混ぜやすいぬか櫃が
あり、令和6年には漆で仕上げた仕込み桶のみそ櫃を発売予定です。
 取締役の柳谷浩二さんは「自分で作ったみそなら一人暮らしの人でも自炊を考えるよう
になるはず。心と体を健やかにしてほしい」と話します。


能代製樽
 昭和21(1946)年創業。結婚式や祝いの席に用いられる酒樽をはじめ、麹ぶたや木桶を
製造しています。
 12月〜1月に最盛期を迎えるのが酒樽作りです。秋田杉の丸太から切り出して乾燥させた
榑を使い、職人一人ひとりが組み立てから仕上げまでを担います。1日に作る量は全体で50
個ほど。最盛期には60個に上るといいます。
 「令和2年以降、新型コロナの影響を大きく受けました」とは代表取締役の畠次郎さんで
す。3年度の売り上げは前年度の3割ほど。「鏡開きが行われる結婚式が減ったのが大きい」
といいます。
 この逆風をチャンスに変えたのが息子で取締役専務の健男さんです。コロナ禍前まで酒
樽製造が忙しくてできなかった木桶作りを令和3年に開始。八峰町の酒蔵に併設したカフェ
に天然秋田杉製の木桶4本を納品しました。健男さんは「今まで作ってきたサイズより大き
く不安もあった。それぞれの酒にストーリーが生まれることを期待したい」と話します。
 「77年間酒樽を作ってきた。昔のような時代に戻るのは難しいが無くなるのはあり得な
い。どのように生き残っていくのかを息子に任せたい」と次郎さんは期待を込めます。


No.405 令和6年1月25日発行(4)
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