のしろ逍遙(しょうよう)

発行:No.1070 平成17年4月14日発行(16)

のしろ逍遙(しょうよう)
歴史と民俗のあいだ(67)

馬の絵(六)「轟・相染講」

 左の絵は轟(とどろき)神明社に納められた相染講(そうぜんこう)の掛け軸です。上部に馬上の人物が、下部には群馬(ぐんば)が配されています。上部の絵は、馬上で剣を持った武士の姿が、相馬(そうま)中村神社の妙見菩薩(みょうけんぼさつ)の絵柄に似ていますが、雲上にあることや、両手をあげて剣を交差させ、火炎を立ち上げているところが違います。相染様に因(ちな)んだ馬頭観音(ばとうかんのん)かとも思いましたが、非常に穏やかな顔をして、慈悲(じひ)の心で野の馬を見守るかのようです。馬頭観音は憤怒(ふんぬ)の形相(ぎょうそう)を持つのが普通ですが、『仏像案内』(吉川弘文館)によると、本来は転輪聖王(てんりんじょうおう)(正法をもって世を治める王)の宝馬(ほうま)が世界を縦横無尽に駆けめぐって、一切の障害を除いて慈悲の本願を果たす観音だとあります。その通りの図かもしれません。
 群馬は草原を駆けめぐり、草を食(は)み、小川を渡る図ですが、自由奔放な姿で、放牧地のさまを表現しています。黒馬は雨を、赤馬は晴れを願い、白馬は神馬(しんめ)ですが、祈晴(きせい)の馬でもあります。馬は農耕に使役されるだけでなく、天候の順調を願い、豊作を祈願する役も担っていたことになります。(古内龍夫)

No.1070 平成17年4月14日発行(16)

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