ふるさと紹介(250)

発行:No.1072 平成17年5月12日発行(10)

ふるさと紹介(250)

能代の境界を訪ねて(檜山編)
市民リポーター 藤島良明、幸坂マチ子

 これまでに2回リポートした能代の境界。15年の鳥形地区、16年の鶴形地区に続き、今回は二ツ井町・山本町と接する檜山地区を訪ねてみました。

大森地区
 山本町との境界に当たる大森地区。ここでは、今年85歳になる元自治会長の落合仁市郎さんにお話を伺いました。
 現在26世帯、60人ぐらいが暮らす大森地区は、ほとんどの家が稲作中心の農業を営んでいて、周りには田園風景が広がります。
 檜山地区は、もともと檜山町という単独の町でしたが、昭和30年、能代市に編入合併されました。その後も、昭和58年に境界を決めるまで、隣接する山本町志戸橋地区とは山や林を共同で使っていたとのことです。
 集落の奥へと延びる山道は、昔は下岩川(山本町)あたりまで続いていたそうです。その道は達子地区(山本町)の人々にとって、能代への近道だったということです。
◎大森地区を歩く
 落合さんの案内で、実際に大森地区を歩いてみました。
 樹齢300年以上の大杉がある大森八幡神社。かつてはかやぶき屋根だったのですが、老朽化が進み、昭和53年に建て替えられたそうです。その中には、かつての神社の柱がそのままの形で残されていました。
 建て替え当時の苦労話なども聞かせていただき、神社一つにも物語があるのだと感じました。
 檜山安東氏のとりで跡、立山(かつては館山)にも登ってみました。赤松林に囲まれた急な石段を登ると、頂上からは能代市が一望できました。
 山本町との境界にあるため池(菅ノ沢堤)は、そこから流れる水が山本町で農業用水として利用されています。そのため、ため池は能代市にあるのですが山本町が建設・管理しています。長い年月と多額の費用をかけて大工事が行われたそうで、田んぼにとって水がいかに大事なものであるかを感じました。

星場台
 取材の途中、農家レストラン・民宿「星場台」に立ち寄りました。
 経営者の野村良子さんは、「子育てが終わったら、人とは違う生き方をしたいと考えていた」と、お店を始めた理由を話してくださいました。古民家を改装したお店は落ち着きのある雰囲気です。いろりやまきストーブ、店内に飾られたわらじや古民具は、どこか懐かしい気持ちにさせてくれます。
 手打ちの檜山そばを中心とした食事は、檜山で採れる農産物がふんだんに使われていて、素朴な自然の恵みを感じることができます。また、テーブルの上には花などがさりげなく飾られていて、細やかな気配りに心が和みます。

羽立地区
 二ツ井町・山本町双方と接している羽立地区では、畠山良一さん、畠山哲夫さんにお話を伺いました。
 羽立地区は周囲を山に囲まれていて、現在は28世帯が暮らしています。檜山町は昭和30年に能代市に合併されましたが、羽立地区に隣接する旧檜山町の揚吉・苅又石地区は、昭和33年に二ツ井町に編入されました。
 昔は周辺一帯が林業を主な産業としていて、揚吉・苅又石地区のほか、二ツ井町仁鮒・濁川や山本町下岩川とも山林を通して盛んに交流していたそうです。
◎山を通してのつながり
 羽立周辺の山はもともと良質な天然杉の産地でした。現在ある杉の木はすべて植林したものだということですが、間伐などが行われ、今でも立派な杉林が広がっています。かつては二ツ井町のあたりまで能代営林署の管轄で、一緒に作業をしていたそうです。 
 冬になると、近隣地域や、遠くは青森県などから馬が連れてこられ、切り出した杉の運搬作業を行っていたそうです。馬は全部で120頭ぐらいも集められたといいます。1頭の馬で、直径2尺、長さ12尺、体積5石ほどになる丸太4〜5本を数時間かけて能代まで運んだとのことです。この運搬作業は家族総出で行われ、男の人が馬そりをひき、女の人はそりが通りやすいように、道に積もった雪に水をかけて凍らせたということです。
◎境界を探そう
 山本町との境界は山の峰ではっきりしているのですが、二ツ井町との境界は複雑だということです。
 集落から車で20分ほど旧2級林道の仙ノ台・檜山線(現県道294号線)を行くと、車1台がやっと通れるほどの道幅になりました。二ツ井町との境界には、これといって目印のようなものもなく、どちらを見ても同じような林が広がっていました。その林の中には、現在では人も通れないほどに草木が生えてしまっていますが、昔の山道と思われる跡がかすかに見られました。

取材を終えて
 能代の境界を実際に歩いてみて、能代もずいぶん広いものだなぁと感じました。
 境界線の取材ということでしたが、取材でお話を伺った人々の人柄や境界での生活など、そこに暮らす人々の姿が印象的でした。また、今につながる昔の様子は非常に興味深いもので、「昔を知り、未来を探る」姿勢が大切だと思いました。
 周辺地域とのかかわりや昔の様子など、さまざまなつながりを知ることで、普段暮らしている能代の新たな一面が見えてくるかもしれません。
 春の一日、のんびりと能代の端っこを歩いてみませんか?

No.1072 平成17年5月12日発行(10)

この記事の掲載された紙面のPDFファイルダウンロードはこちらからダウンロードできます。
紙面の確認や印刷するにはPDFファイルの方が適しています。


広報TOPページへもどる