のしろ逍遙(しょうよう)

発行:No.1073 平成17年5月26日発行(16)

のしろ逍遙(しょうよう)
歴史と民俗のあいだ(70)

馬の絵(九) 「相染森・神馬(しんめ)奉納」

 前回紹介した写真の右側に横長の絵馬が掛けてあります。赤馬を真ん中にして、黒馬が左右に描かれています。黒馬の色が消えかかっていますが、慶応三年(一八六七)五月五日願主(がんしゅ)平野重三郎とあります。相染森の人ではありません。節句の日に遠くからお参りに来たのでしょう。今回の絵馬は、前回の写真の左側に見える絵馬です。昭和五年五月五日に悪土町の田中万次郎の奉納です。悪土(あくど)町は又右衛門橋周辺のことでしょうか。黒馬二頭に紅白の紙垂(しで)と腹帯(はらおび)を分けて結び、祈祷札(きとうふだ)を挟(はさ)んだ矢に御幣(ごへい)を下げています。腹帯には稲妻のような模様を描き入れ、いかにも奉納馬らしく描き分けています。額縁のない小絵馬ですが、様式が整っていますし、馬の姿も躍動感を失わずに描き上げています。このほかに晴れを祈る赤馬や、神馬(しんめ)の白馬の絵馬もあります。
 相染神社は馬頭観音を主神(しゅしん)としますので、本殿には花崗岩(かこうがん)に三面六臂(さんめんろっぴ)の馬頭観音が浮き彫りにされて鎮座しています。かつてのお祭りは八月に行われましたが、そのときは境内に相撲場をつくって、若者たちが力比べに興じたといいます。にぎやかなもので、長崎の十文店(じゅうもんみせ)が出張してきて子どもたちに飴(あめ)などを売ったそうです。なつかしい思い出です。(古内)

No.1073 平成17年5月26日発行(16)

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