埋蔵文化財(遺跡)緊急発掘調査

発行:No.1073 平成17年5月26日発行(9)

埋蔵文化財(遺跡)緊急発掘調査
竹生小学校周辺 杉沢台遺跡

16年度の発掘調査から
 市教育委員会は、昨年度開発行為に伴い、3カ所で埋蔵文化財(遺跡)緊急発掘調査を実施しました。3回にわたり、調査結果の概要をお知らせします。

シリーズ(3) 杉沢台遺跡
 杉沢台遺跡は竹生川を望む東雲台地の北の縁、小土(こづち)集落の東側にあります。この遺跡は、昭和55年に国営能代土地改良事業に伴い緊急発掘調査され、今から5500年ほど前の縄文時代前期のムラが確認されました。長さが約31メートルもある大型住居を含む竪穴住居跡44軒、貯蔵用とみられるフラスコ状の深い穴(フラスコ状土坑(どこう))108基が並列に配置されている状況が明らかになり、全体で約35000平方メートルと推定される遺跡のうち約3600平方メートルが国史跡に指定されています。
 この史跡範囲の東側で、個人による農地造成と農業用ハウス建設に伴い壊される204平方メートルについて6月中旬から7月中旬にかけて緊急発掘調査を行いました。

○縄文時代の生活の痕跡
 調査の結果、縄文時代の竪穴住居跡1軒、フラスコ状土坑17基、そのほか地面に掘られた穴35基、溝や火をたいた跡などを確認しました。穴のうち5基は形状からお墓と思われます。また、縄文時代の土器や、錘(おもり)などの石器、土偶などの土製品が出土しました。
 フラスコ状土坑は、化学の実験で使う三角フラスコのような口が狭くて底が広い形をした穴で、温度や湿度の変化が少なく木の実などの貯蔵に適しているといわれます。穴の壁が崩れたためか、ビーカー状の形をしたものもありますが、底の直径が1.1〜2.4メートル、深さは1.6メートルに達するものもありました。このフラスコ状土坑は調査区のほぼ全面で確認され、平成15年度に調査した部分を含めると、約300平方メートルの中に29基を確認しています。これらは重なり合って掘られているものも多く、ムラの中でフラスコ状土坑を造る場所がある程度決められていたことを物語っています。
 当時の杉沢台の縄文ムラは、大型住居を中心に台地の縁に沿って竪穴住居が東西に並び、その北側には食料を保存するためのフラスコ状土坑が掘られていたのでしょう。石で作られた漁網の錘からは、狩猟とともに漁労にも励んでいた縄文人の姿が浮かんできます。

○個人の権利と文化財の保護
 現在、能代市には200を超える遺跡がありますが、この杉沢台遺跡や檜山城跡のように特に重要なものは「史跡」として保護されています。しかし、史跡範囲から外れたところや史跡に指定されていない遺跡が重要でないわけではなく、その一つひとつがそれぞれ地域の歴史を物語る大事な文化財なのです。ただ、遺跡はその土地と切り離すことができないため、個人の権利ともかかわってきます。教育委員会では、遺跡を保存するとともに個人の権利もなるべく損なわないように調整しますので、遺跡地を掘削する際には、個人・法人にかかわらずご一報くださるようお願いします。

問合せ 文化係 電話89―2953

No.1073 平成17年5月26日発行(9)

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