のしろ逍遙(しょうよう)

発行:No.1074 平成17年6月9日発行(14)

のしろ逍遙(しょうよう)
歴史と民俗のあいだ(71)

馬の絵(十) 「羽立・八幡神社(一)」

 檜山羽立に八幡神社があります。羽立は古くは柾沢(まさざわ)村ともいい、飛び雀三十郎というすばしっこい又鬼(またぎ)(狩人)の話が伝わっています。八幡神社も古くは薬師堂であり、今でも薬師様と呼ぶ人もいます。部落の裏手の小高いところに社殿があり、付近には太平山の石碑や唐松堂もあります。
 その八幡神社には何枚かの絵馬が奉納されています。左の絵馬は安政五年十二月八日に渡辺藤五郎が奉納した板絵ですが、周りに額を付けていた跡があり、もとは大絵馬だったのでしょう。横六十二センチ、縦三十四センチの大きさです。
 絵師は五十嵐蠹仙(とせん)です。右脇に「法橋(ほうきょう)蠹仙筆」とあります。
蠹仙については平成十四年十月二十四日号「築法師太平山講(二)」で紹介しました。三吉大神を描いた絵で、亡くなる四ヵ月前の作品でした。羽立の絵馬はそれより六年前のものです。武者絵を得意とした蠹仙らしく神馬の描きようが凝(こ)っています。鞍(くら)の下に敷く大滑(おおなめ)を白く大きく描き、足を置く鐙(あぶみ)を下げ、尻にあてる鞦(しりがい)を赤く描き、手綱(たづな)を鞍の前輪に結んでいます。こうした細部にわたる目配(めくば)りは蠹仙ならではのものです。木の根元に繋(つな)がれた奉納馬です。(古内)

No.1074 平成17年6月9日発行(14)

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