のしろ逍遙(しょうよう)

発行:No.1091 平成18年3月9日発行(18)

のしろ逍遙(しょうよう)
歴史と民俗のあいだ(88)

句碑(くひ)(三) 「松尾芭蕉」(天内・白岩神社)

 天内(あまない)の白岩(しらいわ)神社の鳥居の傍らにこの碑があります。草むらに隠れて見えにくく、石にはコケも生えて、文字が読みにくくなっていますが、小振りながら風格のある句碑です。
  松杉を ほ免(め)てや風の 薫(かお)る音   翁(おきな)
 芭蕉は元禄七年(一六二一)に他界しますが、そのころの発句(ほっく)を門人各務支考(かがみしこう)が『笈(おい)日記』としてまとめていて、その中に収められた一句です。鎌倉時代の歌人藤原定家(さだいえ)が、風が松と杉を褒めるかのように吹いていると詠(うた)った趣向を取り入れ、風を擬人化(ぎじんか)して、風の優しさ清々(すがすが)しさを詠ったものと評されています。
 天内の白岩神社の環境もその情景に似ていて、それにふさわ
しい句になっています。ことさら大きく彫った「翁」の字は芭蕉のことで、俳人たちが敬意をもって芭蕉に接していることがわかります。「翁」の句碑は他所(よそ)にもあります。
 この句碑を建てたのは富根の山本知石(ちせき)です。碑の右下に知石と彫られています。富根は白岩神社の氏子圏に入り、山本家も熱心な氏子でした。自由民権運動で活躍した山本庄司の父です。庄司の子どもに野石(やせき)という俳人もいて、五空とも親交がありました。(古内)

No.1091 平成18年3月9日発行(18)

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