松くい虫対策

 松くい虫による被害拡大を防ぐため、守るべき松林に指定した区域において被害木並びに不用木を伐採し駆除します。
 森林資源としての松林を保護し、その有する機能を確保するため、松くい虫防除を行います。


1.松くい虫の概要

1.松くい虫とは何か?
 
 
 昭和25年「松くい虫等その他の森林病害虫の駆除予防に関する法律」が施行され、松くい虫は、松・杉などの樹木に付着する穿孔虫類(キクイムシ・カミキリムシ・ゾウムシ)の総称とされていました。しかし、昭和46年になると、松枯れの原因が「マツノザイセンチュウ」によるものと明らかになり、正式に「マツ材線虫病」という病名になりました。つまり、「松くい虫」は「マツ材線虫病」の通称であり、「松くい虫」とうい名の虫は本来存在せず、松枯れは「マツノザイセンチュウ」が原因となっています。
 
 
 2.松枯れの原因
 
 
 松を枯らす「マツノザイセンチュウ」は、体調1ミリに満たない線虫で、健全な松の細胞を破壊して枯らしていきます。この線虫を健全な松に媒介し、被害をまん延させるのが「マツノマダラカミキリ」という昆虫です。つまり、線虫が健全な松を枯らす役割を、カミキリが線虫を枯れた松から健全な松へ運ぶ役割をそれぞれ分担するという共生的関係にあります。
 
 
 3.被害発生のメカニズム
 
 
【6月下旬~8月】
 
 
 マツノマダラカミキリの羽化脱出
 
      マツノマダラカミキリの羽化脱出
 
 枯れ松の材内で越冬したカミキリは初夏になると線虫を体内に抱え、直径1センチほどの穴をあけて外に飛び出します。
 
 
【7月~8月】
 
 
 枝を食べるマツノマダラカミキリ
 
      枝を食べるマツノマダラカミキリ
 
 カミキリは夏の間、健全な松を飛び回り小枝の皮を食べます。そのとき、カミキリの体内の線虫は、小枝の傷口から材内に侵入します。
 
 
【7月~】
 
 
 マツノザイセンチュウ
 
      マツノザイセンチュウ
 
 線虫は、松の材内で殖え続け、松に生理異常をもたらし、健全な松を枯らします。本市のような寒冷地では翌春までかかってダラダラ枯れる「年越し枯れ」の症状が多く見られます。
 
 
【7月~9月】
 
 
 マツノマダラカミキリの産卵後
 
      マツノマダラカミキリの産卵後
 
 健全な松に産卵できないカミキリは、線虫によって衰弱した松や枯れた松を探し、その幹や枝に卵を生み付けます。また、皮付丸太にも産卵します。
 
 
【8月~翌年6月】
 
 
 材内のマツノマダラカミキリ
 
      材内のマツノマダラカミキリ
 
 ふ化した幼虫は、樹皮の下で成長し、晩秋頃までには材内に入り越冬します。
 
 
 
 4.松くい虫の防除方法について(松くい虫の防除方法は予防、駆除に大別されます)
 
 
(1)予防
 
 
【薬剤散布】 
 
 被害木周辺の松林に、羽化脱出期、樹冠部に薬剤を散布し、その松の小枝を食べるカミキリを殺します。これにより、線虫が健全な松に侵入するのを防ぎます。散布方法には、航空機、無人ヘリコプター、地上から動力噴霧器を利用した散布方法があります。
 
 
【樹幹注入】
 
 松の幹にあらかじめ薬剤を注入し、材線虫の侵入を防ぎます。1回の注入で2~3年の効果があり、主に公園、景勝地などの貴重な松を守るために行われます。
 
 
 
地上散布
 
薬剤散布
 
 
樹幹注入
 
樹幹注入
 
 
くん蒸
 
くん蒸
 
 
(2)駆除
 
 
 カミキリは枯れ松に産卵し、その幼虫は翌春まで材内で生活します。そこで、幼虫が被害木から成虫となって飛び出す前に駆除します。なお、カミキリの幼虫は2~3センチの太さの枝まで完全に駆除する必要があります。駆除方法には、焼却、破砕、くん蒸などの方法があります。


 2.松くい虫被害の見分け方

 地域によって多少の差はありますが、通常8月~9月にかけて葉が赤くなって枯れ始めます。また、「マツ材線虫病」に感染しても本市のような寒冷地では、その年のうちには枯れず、翌年に枯れることもあります。


 
 
 
 
 
 

 
ヤニが少なくなる
 
 
 松はヤニが多い木ですが、線虫が侵入するとヤニが少なくなります。
 春から秋の間にナイフで傷を樹皮に傷つけても傷口からヤニがでなくなります。

 
   ナイフによる松ヤニ調査
 
 
 
 
異常なし
 
異常なしの松ヤニ1     異常なしの松ヤニ2 

    樹脂がたまり、  左よりやや少
    時間がたつと   ないと思われ
    流れるもの    るもの 
 



 
異常あり
 
 異常あり松ヤニ1    異常あり松ヤニ2    異常あり松ヤニ3 

  部分的に粒出 微粒が少しあ 樹脂気なく乾
  する程度のも るが、樹脂気 燥気味なもの 
  の      があるもの  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
古い葉から枯れる
 
 
 松くい虫被害の場合は、先に古い葉(2~3年目)が、その後新しい葉(当年)が色あせて、一部は垂れ下がり、短期間のうちに鮮やかな赤褐色に変色していきます。
 乾燥が原因の場合は新しい葉が先に赤褐色に、また、大気汚染(亜硫酸ガス)が原因の場合は同時に赤褐色に変わります。
 
 
 
松くい虫 被害の場合
 
松くい虫による被害の場合
 
 
 
 
 
その他
原因の場合
 
乾燥による初期変化       大気汚染による初期変化
 
乾燥による初期変化  大気汚染による初期変化